あっせんとは

「あっせん」とは、当事者同士の話し合いだけでは解決が難しい紛争について、第三者が間に入り、双方の主張を調整して合意形成を促す手続きのことです。裁判のようにどちらかの言い分が全面的に認められるのではなく、あくまでも当事者双方の合意によって解決を目指す点が特徴です。

あっせんを行う機関は多岐にわたります。例えば、労働問題であれば労働局の「あっせん」、男女間のトラブルであれば家庭裁判所の「家事調停(あっせんを兼ねる)」、消費者トラブルであれば国民生活センターなどがあります。これらの機関に所属するあっせん委員や調停委員といった専門家が、中立的な立場で当事者の間に入り、解決策を探っていきます。

あっせんの手続きは、非公開で行われることが多く、比較的短期間で解決に至るケースもあります。費用も裁判に比べて安価な場合が多く、気軽に利用しやすい制度と言えるでしょう。

知っておくべき理由

もしあなたが「あっせん」という制度を知らないと、トラブルに巻き込まれた際に、不利な状況で泣き寝入りしてしまう可能性があります。

例えば、会社から不当な解雇を言い渡されたとします。労働組合に加入していなかったり、弁護士に相談する費用が捻出できなかったりする場合、会社と直接交渉してもまともに取り合ってもらえないかもしれません。感情的になってしまい、冷静な話し合いができないこともあるでしょう。このような状況で「あっせん」という制度を知らなければ、会社側の言うがままに退職を承諾してしまったり、本来受け取れるはずの退職金や未払い賃金を諦めてしまったりするかもしれません。

また、離婚を考えているけれど、配偶者との話し合いが全く進まないというケースも考えられます。財産分与や子どもの親権・養育費について、お互いの感情が先行してしまい、建設的な話し合いができないと、時間だけが過ぎてしまい、精神的な負担も大きくなります。このようなときに、あっせん(家事調停)という選択肢を知らなければ、いつまでも解決の糸口が見つからず、途方に暮れてしまうことになります。

あっせんは、専門家が中立的な立場で間に入ってくれるため、感情的にならずに冷静に話し合いを進められるメリットがあります。この制度を知らないことで、本来得られるはずの権利を放棄してしまったり、精神的な負担を不必要に長引かせてしまったりするリスクがあるのです。

具体的な場面と事例

あっせんが利用される具体的な場面は様々です。

  • 労働問題

    • 事例:不当解雇
      会社から突然解雇を言い渡されたAさん。解雇理由に納得がいかず、会社と話し合いを試みましたが、会社側は取り合ってくれませんでした。Aさんは労働局に「あっせん」を申請。あっせん委員が間に入り、会社側とAさんの双方から事情を聞き、解雇の撤回または解決金での和解を提案しました。結果として、Aさんは会社から解決金を受け取り、円満に退職することで合意しました。
    • 事例:ハラスメント
      職場で上司からのパワーハラスメントに悩んでいたBさん。会社に相談しても状況が改善されず、精神的に追い詰められていました。Bさんは労働局のあっせんを利用し、あっせん委員を通じて上司からの謝罪と再発防止策を求めました。最終的に、会社側がハラスメントの事実を認め、上司への指導とBさんの部署異動が行われました。
  • 男女間のトラブル(離婚・DVなど)

    • 事例:離婚協議の難航
      Cさん夫婦は離婚に合意したものの、財産分与や子どもの養育費について意見が対立し、話し合いが膠着状態に陥っていました。Cさんは家庭裁判所に「家事調停(あっせんを兼ねる)」を申し立てました。調停委員が夫婦それぞれの主張を聞き、法的な観点や過去の判例などを参考にしながら、具体的な解決案を提示。最終的に、夫婦双方が納得できる形で離婚が成立しました。
  • 消費者トラブル

    • 事例:欠陥商品の返品・交換
      Dさんはインターネット通販で高額な家電製品を購入しましたが、初期不良で使用できませんでした。販売店に連絡しても「保証期間外」として対応してもらえず、困っていました。Dさんは国民生活センターに相談し、あっせんを依頼。あっせん担当者が販売店とDさんの間に入り、状況を調査。結果として、販売店が初期不良を認め、新品への交換に応じました。

覚えておくポイント

  • あっせんは、第三者が中立的な立場で間に入り、話し合いでの解決を促す制度です。裁判とは異なり、当事者双方の合意がなければ成立しません。
  • 労働問題、男女間のトラブル、消費者トラブルなど、様々な分野で利用されています。困ったときは、まず利用できるあっせん制度がないか調べてみると良いでしょう。
  • あっせんの手続きは、一般的に非公開で行われ、費用も比較的安価です。感情的になりがちなトラブルでも、冷静に話し合いを進める助けになります。
  • あっせんによって必ずしも解決に至るとは限りません。合意に至らない場合は、次の法的手段(訴訟など)を検討することになります。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。