事実婚とは

事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、夫婦として共同生活を送っている状態を指します。法律上の夫婦ではないため、戸籍はそれぞれ独立したままです。しかし、社会生活においては夫婦とほぼ同じような関係性を築き、お互いに協力し合って暮らしています。

法的な手続きとしては、役所に「婚姻届」を提出することで法律婚が成立します。一方、事実婚には特別な届出は必要ありません。お互いが夫婦としての意思を持ち、共同生活を営んでいる実態があれば、事実婚と認められる可能性があります。

具体的には、同居して生計を共にしている、お互いに貞操義務を負っている、社会的に夫婦として認知されている(例えば、親族や友人への紹介、公共料金の支払い名義など)といった状況が事実婚と判断される要素となります。

知っておくべき理由

事実婚という言葉を知らないと、思わぬトラブルに巻き込まれたり、本来受けられるはずの権利を逃したりする可能性があります。

例えば、長年連れ添ったパートナーが突然亡くなった場合を考えてみましょう。もし法律上の婚姻関係になければ、残されたパートナーは相続人にはなれません。パートナーが遺言書を残していなければ、どんなに長く一緒に暮らしていても、パートナーの財産を相続することはできません。遺された住居や貯蓄を失う可能性も出てきます。

また、パートナーが病気で入院し、手術が必要になった際、病院から「ご家族の方に説明を」と言われることがあります。法律上の夫婦であれば、当然のように説明を受け、手術の同意もできますが、事実婚の場合、法的な家族ではないため、病院側が情報開示を拒否したり、手術の同意を求められなかったりするケースがあります。緊急時に大切なパートナーの医療判断に関われないのは、精神的にも大きな負担となるでしょう。

さらに、パートナーが職場で加入している社会保険の扶養に入りたいと考えても、法律上の夫婦でなければ、扶養認定の際に事実婚であることを証明する書類(住民票の続柄に「夫(未届)」や「妻(未届)」と記載されているものなど)が必要になります。この手続きを知らないと、扶養に入ることができず、自身で国民健康保険料や国民年金保険料を支払うことになり、経済的な負担が増えることになります。

このように、事実婚は法的な保護が限定的であるため、その特性を理解していないと、いざという時に困る場面が多く発生します。

具体的な場面と事例

事実婚の関係にある方が直面する具体的な場面と事例をいくつかご紹介します。

  • パートナーの死亡と相続
    AさんとBさんは20年間事実婚の関係にあり、持ち家で生活していました。しかし、Bさんが突然亡くなりました。Bさんには両親と兄弟がいましたが、遺言書はありませんでした。この場合、法律上、AさんはBさんの相続人ではないため、Bさんの財産(持ち家や預貯金など)はBさんの両親と兄弟が相続することになります。Aさんは住む場所を失い、経済的に困窮する事態に陥る可能性がありました。

  • 医療同意と情報開示
    CさんとDさんは事実婚で暮らしていました。ある日、Dさんが事故で意識不明の重体となり、緊急手術が必要になりました。病院からは「ご家族の方に手術の同意を」と連絡がありましたが、Cさんは法律上の家族ではないため、病院側はCさんを家族として認めず、手術内容の詳細な説明や同意を求めることに躊躇しました。Cさんは大切なDさんの命に関わる判断に立ち会えず、もどかしい思いをしました。

  • 社会保険の扶養認定
    Eさんは会社員、Fさんはパートタイマーで、事実婚の関係にありました。FさんはEさんの社会保険の扶養に入りたいと考えましたが、会社の人事担当者から「事実婚を証明する書類が必要です」と言われました。住民票の続柄を「夫(未届)」に変更し、さらに、EさんとFさんの間に扶養関係があることを示す書類(生計を共にしていることの証明など)を提出することで、ようやく扶養認定を受けることができました。

  • 不動産の共同購入
    GさんとHさんは事実婚で、共同で住宅を購入することにしました。法律上の夫婦であれば、共有名義で登記する際に特に問題はありませんが、事実婚の場合、万が一関係が破綻した際に、どちらがどれだけの権利を持つのか、どのように財産を分けるのかといった取り決めがないと、大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、購入前に公正証書などで財産分与に関する合意をしておくことが重要です。

覚えておくポイント

  • 事実婚は法的な夫婦ではないため、相続権親権(共同親権は認められません)など、法律婚で当然に得られる権利の一部は自動的に発生しません。
  • パートナーが亡くなった際の相続や、医療同意の場面で困らないよう、遺言書の作成や後見とは?将来の安心を自分で選ぶ制度">任意後見契約公正証書による合意など、生前の対策を検討することが重要です。
  • 社会保険の扶養や、税法上の配偶者控除など、公的な制度を利用する際には、事実婚であることを証明する書類(住民票の続柄変更など)が必要となる場合があります。
  • 事実婚を解消する際も、財産分与や慰謝料などについて話し合いが必要になります。トラブルを避けるため、関係が良好なうちに契約書を作成しておくことをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。