就職活動を経て、ようやく手にした内定。しかし、その内定が会社側の一方的な都合で取り消されてしまうことがあります。これは、内定者にとって大きな衝撃であり、その後の人生設計にも影響を及ぼしかねない重大な問題です。「内定取り消し」は、単なる採用の撤回ではなく、法的な観点からも重要な意味を持つ行為です。

内定取り消しとは

内定取り消しとは、企業が応募者に対して一度出した採用の内定を、後になって撤回することを指します。一般的に、企業が応募者に内定を通知し、応募者がそれを受諾した時点で、企業と応募者の間には「労働契約」が成立したと解釈されます。この労働契約は、多くの場合、「始期付解約権留保付労働契約」という特殊な形を取ると考えられています。

「始期付」とは、実際に働き始める日(入社日)が到来することで効力が発生するという意味です。「解約権留保付」とは、企業側が一定の事由が発生した場合に限り、契約を解除できる権利を留保している、という意味です。

つまり、内定が出た時点で労働契約は成立しているため、企業が内定を取り消す行為は、法的には「解雇」に準ずるものとして扱われます。そのため、企業は内定を取り消すにあたって、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られます。単に「会社の気が変わった」といった理由では、内定を取り消すことはできません。

知っておくべき理由

内定取り消しが近年注目される背景には、経済状況の変化や社会情勢の不安定化が挙げられます。景気の変動や企業の業績悪化、あるいは予期せぬパンデミックなどの影響により、企業が当初予定していた採用計画を見直さざるを得ない状況が発生することがあります。

特に、新卒採用においては、入社までの期間が長く、その間に社会情勢が大きく変化する可能性もあります。また、中途採用においても、企業の事業再編やM&A(企業の合併・買収)など、経営戦略の大きな転換期に内定取り消しが発生するケースが見られます。

インターネットやSNSの普及により、内定取り消しに関する情報が瞬時に広まりやすくなったことも、話題性を高める一因です。内定取り消しのニュースは、当事者だけでなく、就職活動中の学生や転職を考えている社会人にとっても、自身の将来に関わる問題として関心を集める傾向にあります。

どこで使われている?

内定取り消しは、主に以下のような具体的な場面で問題となります。

  • 新卒採用における内定取り消し:
    大学卒業予定者などが、就職活動を経て企業から内定を得たものの、入社日前に企業側から内定を撤回されるケースです。企業の業績悪化や採用計画の変更、あるいは内定者の卒業ができなかった場合などに発生することがあります。
  • 中途採用における内定取り消し:
    転職活動中の社会人が、新たな企業から内定を得て、現職を退職する準備を進めていた矢先に、内定を取り消されるケースです。新規事業の凍結、組織再編、採用担当者の変更などが理由となることがあります。
  • 内定者の経歴詐称や重大な問題発覚による取り消し:
    内定後に、応募書類に虚偽の記載があったことが判明したり、内定者の過去の犯罪歴など、採用時に知り得なかった重大な問題が発覚したりした場合に、企業が内定を取り消すことがあります。ただし、この場合も、その事実が内定を取り消すに足る客観的かつ合理的な理由であるかどうかが問われます。

これらの場面で内定取り消しが行われた場合、内定者は精神的・経済的な損害を被ることが多く、企業と内定者の間でトラブルに発展する可能性があります。

覚えておくポイント

内定取り消しに関して、知っておくべき重要なポイントがいくつかあります。

  1. 内定取り消しは「解雇」に準ずる:
    内定が出た時点で労働契約が成立していると解釈されるため、企業が内定を取り消す行為は、法的には「解雇」と同等に扱われます。そのため、企業には客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当と認められる場合に限られます。安易な内定取り消しは、不当解雇として争われる可能性があります。

  2. 内定取り消しの理由に注意する:
    企業が内定を取り消せるのは、原則として、内定通知書や採用条件書に明記された「内定取り消し事由」に該当し、かつその事由が客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限られます。例えば、卒業できなかった場合や、健康状態が著しく悪化し業務遂行が困難になった場合などがこれに当たります。単なる「業績悪化」だけでは、正当な理由と認められないこともあります。

  3. 内定通知書や雇用契約書を確認する:
    内定通知書や雇用契約書には、内定取り消しに関する重要な情報が記載されていることがあります。どのような場合に内定が取り消される可能性があるのか、内定受諾の条件はどうなっているのかなど、内容をよく確認しておくことが大切です。不明な点があれば、内定受諾前に企業に確認することをおすすめします。

  4. 不当な内定取り消しと感じたら専門家に相談する:
    もし、内定取り消しの理由に納得がいかない場合や、不当だと感じる場合は、一人で抱え込まずに弁護士などの専門家に相談することを検討してください。労働問題に詳しい専門家は、内定取り消しの正当性を判断し、必要に応じて企業との交渉や法的な手続きをサポートしてくれます。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。