寄与分とは

寄与分(きよぶん)とは、相続において、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人がいる場合に、その貢献度に応じて、通常の相続分に上乗せして財産を受け取ることができる制度です。これは、共同相続人間の公平を図ることを目的としています。

例えば、被相続人の事業を手伝って財産を増やしたり、被相続人の療養看護に尽力して財産の減少を防いだりした場合などが該当します。このような特別な貢献があったにもかかわらず、法定相続分通りにしか財産を受け取れないとすれば、貢献した相続人にとっては不公平感が生じる可能性があります。寄与分は、このような不公平を是正し、それぞれの相続人の貢献度を相続財産の分配に反映させるための仕組みとして民法に定められています。

寄与分が認められるためには、「特別の寄与」である必要があります。これは、親族として通常期待される範囲を超えた貢献を指します。例えば、親の介護をしたとしても、それが一般的な扶養義務の範囲内であれば、特別の寄与とは認められにくい傾向があります。しかし、長期間にわたり専門的な介護を無償で行い、その結果、介護費用が大幅に節約されたようなケースでは、特別の寄与と認められる可能性があります。

知っておくべき理由

寄与分が注目される背景には、現代社会における家族形態や介護のあり方の変化が挙げられます。

まず、少子高齢化の進展により、親の介護を子が担うケースが増加しています。特に、同居して長期間にわたり献身的に介護を行う子が、他の兄弟姉妹と比べて経済的・精神的に大きな負担を負うことは少なくありません。このような状況で、介護に尽力した子の貢献を相続において適切に評価すべきだという認識が広まっています。

次に、核家族化や地域社会とのつながりの希薄化も影響しています。かつては大家族の中で自然と行われていた介護や家業の手伝いが、現代では特定の相続人に集中しやすくなっています。その結果、特定の相続人の貢献が際立ち、他の相続人との間で不公平感が生じやすくなっているのです。

また、相続をめぐるトラブルが増加していることも一因です。相続財産が不動産や預貯金だけでなく、事業用資産など多岐にわたるようになり、相続人同士の利害関係が複雑化しています。このような状況で、寄与分は、単なる法定相続分では解決できない公平性の問題を調整する手段として、その重要性が再認識されています。

さらに、2019年には民法が改正され、相続人ではない親族(例えば、子の配偶者など)が被相続人の療養看護などに貢献した場合に、金銭の支払いを請求できる「特別寄与料」の制度が新設されました。これは寄与分とは別の制度ですが、相続における貢献を評価する動きが社会全体で強まっていることを示しており、寄与分への関心も高まる要因となっています。

どこで使われている?

寄与分は、主に相続財産の分割協議や、それがまとまらない場合の家庭裁判所での調停・審判の場面で主張されます。具体的なケースとしては、以下のような状況で適用されることがあります。

  1. 被相続人の事業への貢献

    • 被相続人が営んでいた事業(農業、商店、中小企業など)を、相続人が長年にわたり無償または低賃金で手伝い、その事業の維持・発展に大きく貢献したケースです。例えば、親の農業を継いで実質的に経営を担っていたが、給与はほとんど受け取っていなかった場合などが考えられます。
  2. 被相続人の財産の維持・増加への貢献

    • 被相続人の所有する不動産の管理や修繕を無償で行い、その価値の維持に貢献したケースや、被相続人の財産を運用して増やしたケースなどが該当します。
  3. 被相続人の療養看護への貢献

    • 被相続人が病気や高齢で介護が必要になった際、特定の相続人が長期間にわたり献身的に介護を行い、その結果、外部の介護サービス費用などが大幅に節約されたケースです。同居して日常的な介護を全て担っていた場合や、遠距離から頻繁に駆けつけて介護を行っていた場合などが考えられます。この場合、単なる扶養義務の範囲を超えた「特別の寄与」と認められるかどうかがポイントになります。

これらのケースにおいて、寄与分が認められると、まず被相続人の財産全体から寄与分が控除され、その残りの財産を法定相続分に従って分割します。その後、寄与分を主張した相続人は、控除された寄与分を上乗せして受け取ることになります。

覚えておくポイント

寄与分を検討する際に、覚えておきたい実用的なポイントをいくつかご紹介します。

  1. 「特別の寄与」の証明が重要

    • 寄与分が認められるためには、一般的な親族としての扶養義務や協力義務の範囲を超えた「特別の寄与」があったことを具体的に証明する必要があります。例えば、介護であれば、介護期間、介護内容、他の兄弟姉妹との分担状況、外部サービスを利用した場合にかかる費用、医師の診断書などが証拠となり得ます。事業への貢献であれば、事業内容、関与期間、具体的な業務内容、給与の有無や金額、事業の売上や利益への貢献度などを客観的に示す資料(帳簿、取引記録など)が役立ちます。
  2. 相続人全員の合意が基本

    • 寄与分は、原則として相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で合意が得られれば、その内容で認められます。しかし、合意が難しい場合、家庭裁判所に寄与分を定める調停や審判を申し立てることになります。裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めます。
  3. 時効に注意する

    • 寄与分を定める審判の請求は、相続開始の時から10年を経過したとき、または相続開始の時から5年以内に遺産分割協議が成立した場合は、その成立の時から1年を経過したときには、請求できなくなる場合があります。ただし、これは遺産分割協議が成立した場合の特例であり、一般的には相続開始から10年が目安となります。
  4. 特別寄与料との違い

    • 寄与分は「相続人」が対象ですが、相続人ではない親族(例えば、亡くなった方の長男の妻など)が献身的に介護などを行った場合は、「特別寄与料」を請求できる可能性があります。これは2019年の民法改正で新設された制度であり、寄与分とは異なるため、ご自身の立場がどちらに該当するかを確認することが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。