扶養請求権とは

扶養請求権とは、経済的に自立できない人が、特定の親族に対して生活費などの経済的な援助(扶養)を求めることができる権利のことです。この権利は、民法によって定められています。

扶養には、大きく分けて二つの種類があります。

  • 生活扶助義務(民法第877条第1項):直系血族(親子、祖父母と孫など)および兄弟姉妹の間で発生する義務です。これは、扶養義務者が自身の生活を犠牲にしても扶養しなければならない、比較的強い義務とされています。
  • 生活保持義務(民法第752条、第877条第2項):夫婦間や、特別な事情がある場合の三親等内の親族間で発生する義務です。こちらは、扶養義務者が自身の生活と同程度の水準で扶養する義務とされています。

扶養請求権を行使する場合、まずは当事者間で話し合い、合意を目指すことが一般的です。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に扶養調停を申し立てることができます。調停でも合意に至らない場合は、扶養審判へと移行し、裁判所が扶養の要否や金額などを判断します。

民法第877条(扶養義務者) 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

知っておくべき理由

扶養請求権について知っておかないと、経済的に困窮しているにもかかわらず、本来受けられるはずの援助を受けられずに苦しむ可能性があります。

例えば、離婚後に経済的に自立が難しい状況になったにもかかわらず、元配偶者に対して扶養を求めることができることを知らなかったため、生活保護の申請を検討するしか選択肢がないと思い込んでしまうケースがあります。特に、子どもを育てている場合、養育費とは別に、親自身の生活費も必要な場合がありますが、この扶養請求権を知らないと、その可能性に気づけません。

また、高齢になり、自身の年金だけでは生活が苦しくなった親が、子どもに対して経済的な援助を求めることができることを知らないと、生活の質が著しく低下したり、医療費の支払いに困ったりすることが起こり得ます。子ども側も、親の扶養義務について正しく理解していないと、親からの相談に対して「自分も生活が苦しいから無理だ」と一蹴してしまい、結果的に親子の関係が悪化したり、親が孤立したりする原因となることもあります。

このように、扶養請求権を知らないことで、本来であれば法的に認められている経済的な支えを失い、生活困窮に陥ったり、家族間の不要な対立を招いたりするリスクがあるのです。

具体的な場面と事例

扶養請求権が問題となる具体的な場面はいくつかあります。

  • 離婚後の生活費:離婚後、専業主婦(夫)だった方が、すぐに経済的に自立することが難しい場合があります。このとき、元配偶者に対して、当面の生活費として扶養を求めることができます。例えば、Aさんは長年専業主婦でしたが、夫と離婚することになりました。慰謝料や財産分与だけでは当面の生活が厳しく、再就職にも時間がかかりそうです。この場合、Aさんは元夫に対して扶養請求権を行使し、一定期間の生活費を求めることができます。

  • 高齢の親の扶養:高齢になった親が、年金だけでは生活費や医療費を賄いきれない場合、子どもに対して扶養を求めることがあります。Bさんの母親は年金収入が少なく、病気がちで医療費がかさみ、生活が苦しくなりました。Bさんは兄弟姉妹と協力して母親の生活を支える義務がありますが、話し合いがまとまらない場合、母親は子どもたちに対して扶養請求権を行使することができます。

  • 病気や障害による失業:突然の病気や事故で働けなくなり、収入が途絶えてしまった場合、配偶者や親に対して扶養を求めることがあります。Cさんは事故で長期入院が必要となり、仕事を休職せざるを得なくなりました。収入が途絶え、貯蓄も底をつきそうになったため、Cさんは配偶者に対して生活費の援助を求めることができます。

これらの事例のように、予期せぬ事態や人生の転機において、扶養請求権は経済的なセーフティネットとして機能する可能性があります。

覚えておくポイント

  • 扶養請求権は法律で認められた権利です。 経済的に困窮した場合、特定の親族に対して生活費などの援助を求めることができます。
  • まずは話し合い、解決しない場合は家庭裁判所へ。 扶養を求める際は、まず当事者間で話し合い、合意を目指しましょう。難しい場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。
  • 扶養義務の範囲と種類を理解する。 扶養義務には、直系血族・兄弟姉妹間の「生活扶助義務」と、夫婦間などの「生活保持義務」があり、それぞれ義務の強さが異なります。
  • 個別の状況に応じた判断が必要です。 扶養の要否や金額は、請求する側と扶養義務を負う側の双方の収入、財産、生活状況などを考慮して決定されます。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。