未遂とは
未遂とは、犯罪を実行しようとしましたが、何らかの理由でその犯罪が完成しなかった状態を指す法律用語です。例えば、人を殺そうと刃物で襲いかかったものの、相手が逃げたため殺害に至らなかった場合などが未遂に該当します。
日本の刑法では、未遂犯も処罰の対象となる場合があります。ただし、未遂犯の刑罰は、既遂犯(犯罪が完成した場合)よりも減軽されることがあります。
刑法には、未遂犯に関する一般的な規定があります。
**刑法第43条** 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
この条文にあるように、未遂犯には大きく分けて二つの種類があります。
- 不能犯:そもそも犯罪が成立する可能性がなかった場合(例えば、呪術で人を殺そうとした場合など)。これは未遂犯とは異なり、処罰されません。
- 中止犯:実行行為に着手した後、自己の意思で犯罪を中止した場合。この場合は、刑が減軽されたり、免除されたりする可能性があります。
知っておくべき理由
「未遂」という言葉は、日常生活では「あと一歩で成功だった」といったニュアンスで使われることもありますが、法律の世界では、処罰の対象となる行為を指す重要な概念です。この言葉の意味を正しく理解していないと、思わぬ誤解や不利益を招く可能性があります。
例えば、夫婦間のトラブルで、感情的になり相手に暴力を振るおうとしたものの、寸前で思いとどまったとします。この場合、自分では「何もしていない」と考えていても、状況によっては「暴行の未遂」と判断される可能性もゼロではありません。もし、相手が警察に相談し、実行行為に着手したと見なされれば、警察の捜査対象となり、逮捕や取り調べを受ける事態に発展するかもしれません。
また、インターネット上で他人の個人情報を盗もうと、不正なプログラムを仕掛けようとしたものの、技術的な問題で未遂に終わったとします。「結局何も盗んでいないから大丈夫だろう」と安易に考えていると、サイバー犯罪の未遂として立件され、逮捕されるリスクがあります。実際に、不正アクセス禁止法など、未遂犯を処罰する法律は多岐にわたります。
このように、たとえ犯罪が完成しなかったとしても、その行為自体が法的に問題視され、刑事罰の対象となる可能性があることを知っておくことは、自分自身や大切な人を守る上で非常に重要です。
具体的な場面と事例
未遂が問題となる具体的な場面は多岐にわたります。
- 窃盗未遂:デパートで商品を万引きしようとカバンに入れたものの、店員に見つかり、レジを通らずに店を出る前に取り押さえられた場合。商品を盗み出すという行為は完成していませんが、窃盗の実行に着手したと見なされ、窃盗未遂として処罰される可能性があります。
- 詐欺未遂:相手を騙して金銭をだまし取ろうと嘘の情報を伝えたものの、相手が不審に思い、お金を渡さなかった場合。相手を騙す行為は行われましたが、金銭をだまし取るという結果には至っていません。この場合も、詐欺未遂として処罰の対象となります。
- 殺人未遂:口論の末、相手を殺そうと包丁で切りかかったものの、相手が身をかわして怪我を負わせるにとどまった場合。殺害という結果は発生していませんが、殺意を持って実行行為に着手しているため、殺人未遂として非常に重い罪に問われます。
- 放火未遂:住宅に火をつけようと可燃物をまき、ライターで火をつけようとした瞬間に警察官に発見され、逮捕された場合。火災は発生していませんが、放火の実行に着手しているため、放火未遂として処罰されます。
これらの事例は、犯罪が完成しなかったとしても、その行為の危険性や悪質性から、未遂犯として処罰されることを示しています。
覚えておくポイント
- 未遂犯も処罰の対象になることがある:犯罪が完成しなかったとしても、実行行為に着手したと判断されれば、刑事罰の対象となる可能性があります。
- 既遂犯よりも刑が減軽される場合がある:未遂犯は、既遂犯に比べて刑が減軽されることが一般的ですが、その減軽の程度は事案によって異なります。
- 自己の意思で中止すれば刑が軽くなる可能性:「中止犯」として、自らの意思で犯罪を中止した場合、刑が減軽されたり免除されたりする可能性があります。
- 「できない」と判断される行為は処罰されない:呪術で人を殺そうとするなど、そもそも犯罪が成立する可能性がない「不能犯」は処罰されません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。