死因贈与とは

死因贈与(しいんぞうよ)とは、贈与する方(贈与者)が亡くなったときに、受贈者(財産を受け取る方)に財産を贈与することを約束する契約のことです。一般的な贈与は、財産を渡す方と受け取る方の合意があれば成立しますが、死因贈与は、贈与者の「死亡」という条件が成就したときに効力が発生する点が特徴です。

この契約は、贈与者と受贈者の双方の合意によって成立します。遺言書のように贈与者の一方的な意思表示で完結するものではなく、受贈者もその内容を承諾していることが必要です。そのため、贈与者が亡くなった後に「財産を受け取るはずだった」というトラブルが起きにくいというメリットがあります。

また、死因贈与は、贈与者の生前に契約を締結するものの、効力は贈与者の死亡時に発生するため、相続に関する民法の規定が準用されることがあります。例えば、遺留分(相続人が最低限受け取れる財産の割合)の侵害や、債務控除の対象となるかなど、相続税の計算においても考慮される場合があります。

知っておくべき理由

近年、死因贈与が注目される背景には、社会の変化が大きく関係しています。

一つは、高齢化社会の進展です。ご自身の介護や生活を支えてくれた方、例えば、法定相続人ではないけれど長年連れ添ったパートナーや、献身的に介護してくれた親族などに財産を渡したいと考える方が増えています。遺言書でもそうした意思は実現できますが、遺言書は形式が厳格で、書き方を間違えると無効になるリスクがあります。死因贈与であれば、契約として双方の合意があるため、遺言書よりも確実に意思を実現できると考える方がいらっしゃるのです。

二つ目に、家族の多様化です。再婚や事実婚など、従来の家族の形にとらわれない関係性が増えています。このような場合、法定相続人ではない方へ財産を確実に渡したいというニーズが高まります。遺言書も有効な手段ですが、死因贈与は生前に相手の同意を得て契約を結ぶため、より確実性が高いと感じられることがあります。

三つ目に、相続トラブルの回避です。遺言書の場合、その内容を巡って相続人同士で争いになるケースも少なくありません。死因贈与は、生前に受贈者との間で合意が形成されているため、贈与者の死後に「こんなはずではなかった」といった受贈者側の不満が生じにくいと考えられます。ただし、他の相続人の遺留分を侵害する内容である場合、遺留分侵害額請求の対象となる可能性はあります。

どこで使われている?

死因贈与は、以下のような具体的な場面で活用されることがあります。

  • 法定相続人以外の方への財産贈与
    例えば、長年連れ添った事実婚のパートナーや、献身的に介護してくれた親族、あるいは特定の友人や団体など、法律上の相続権がない方へ財産を渡したい場合に利用されます。遺言書と同様に、ご自身の意思を反映させることができます。
  • 特定の財産を確実に渡したい場合
    「この家は長男に」「この土地は次女に」といったように、特定の財産を特定の人物に確実に渡したい場合に、死因贈与契約を結ぶことがあります。これにより、相続発生時の財産分割協議の手間を省き、贈与者の意思を明確にすることができます。
  • 負担付きの贈与をしたい場合
    死因贈与は「負担付き死因贈与」とすることも可能です。例えば、「私が亡くなるまで面倒を見てくれたら、この家を贈与する」といったように、受贈者に何らかの義務(負担)を課すことができます。この場合、受贈者はその負担を履行することで財産を受け取ることになります。

覚えておくポイント

死因贈与を検討する際に、知っておくべき実践的なポイントをいくつかご紹介します。

  1. 契約書は書面で作成する
    死因贈与契約は、口頭でも成立するとされていますが、後々のトラブルを避けるためにも、必ず書面で作成することをお勧めします。特に、不動産の贈与など重要な財産に関わる場合は、公正証書で作成すると、その内容や存在が明確になり、紛失のリスクも軽減できます。
  2. 撤回が可能である
    死因贈与契約は、原則として贈与者がいつでも撤回できます。ただし、受贈者がすでに負担を履行しているなど、特別な事情がある場合には撤回が制限されることもあります。また、遺言書による死因贈与の撤回も可能です。
  3. 遺留分に注意する
    死因贈与も、他の相続人(兄弟姉妹を除く)の遺留分を侵害する可能性があります。もし、死因贈与によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。そのため、契約内容を検討する際には、遺留分を考慮に入れることが重要です。
  4. 相続税の対象となる
    死因贈与によって取得した財産は、相続税の課税対象となります。贈与税ではなく相続税が適用されるため、相続税の基礎控除や各種特例の対象となる場合があります。税務上の取り扱いについては、事前に税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。