略式命令とは

略式命令とは、比較的軽微な犯罪について、公開の裁判を開かずに書面審理だけで罰金や科料の刑罰を科す手続きのことです。正式名称は「略式手続」といいます。

この手続きは、検察官が裁判所に請求し、裁判所がその内容を審査して発令します。有罪が確定すると、前科となります。対象となる犯罪は、100万円以下の罰金または科料に相当する事件に限られます。例えば、交通違反による罰金刑や、ごく軽微な窃盗事件などがこれに該当する場合があります。

略式命令は、被疑者(犯罪の疑いをかけられている人)がその内容に同意していることが前提となります。検察官は、略式命令を請求する前に、被疑者に対して略式手続の趣旨や、これに同意しない場合は正式な裁判を受ける権利があることを説明し、同意を得なければなりません。

知っておくべき理由

略式命令について知っておかないと、思わぬ不利益を被る可能性があります。例えば、以下のような状況が考えられます。

  • 「罰金を払えば終わり」と安易に考えてしまう: 略式命令によって罰金を納付すると、それは有罪判決として扱われ、前科がつきます。前科がつくと、職業によっては資格制限を受けたり、海外渡航に影響が出たりする可能性があります。単に「お金を払って済ませる」という感覚でいると、後でその影響の大きさに気づき、後悔することになりかねません。
  • 自分の言い分を主張する機会を失う: 略式命令は書面審理で行われるため、公開の法廷で証拠を提出したり、自分の無実を主張したりする機会がありません。もし、自分が犯したとされる行為に心当たりがない、あるいは事実関係に誤りがあると感じている場合でも、略式命令に同意してしまうと、その後の異議申し立てが難しくなります。
  • 不起訴や無罪の可能性を見過ごす: 弁護士に相談していれば、不起訴処分になったり、正式な裁判で無罪を勝ち取れたりする可能性があったにもかかわらず、略式命令に同意してしまったために、その機会を失うことがあります。特に、警察や検察の取り調べ中に、十分な説明がないまま略式命令への同意を求められるケースもゼロではありません。

このように、略式命令は迅速な処理が可能である一方で、その影響や手続きの性質を理解していないと、後に大きな問題に発展する可能性があるのです。

具体的な場面と事例

略式命令が用いられる具体的な場面としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 交通違反:飲酒運転や無免許運転など、比較的重い交通違反で罰金刑が科される場合、略式命令が利用されることがあります。例えば、酒気帯び運転で検挙され、検察官から**「罰金30万円の略式命令」**を提示された場合などです。
  • 軽微な窃盗:万引きなど、被害額が小さく、初犯であるような軽微な窃盗事件で、検察官が起訴猶予ではなく罰金刑が相当と判断した場合に、略式命令が請求されることがあります。
  • 暴行罪:相手に怪我を負わせるに至らない程度の暴行で、示談が成立しなかった場合などに、罰金刑として略式命令が選択されることがあります。

これらの場合、警察での取り調べ後、検察庁に送致され、検察官から略式命令の説明を受け、同意を求められる流れが一般的です。同意すると、裁判所から略式命令が発令され、罰金を納付することになります。もし、略式命令の内容に不服がある場合は、正式裁判の請求をすることができます。この請求は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に行う必要があります。

逮捕から裁判までの流れと知っておくべきこと">刑事訴訟法 第461条の2 略式命令の告知を受けた者は、その告知を受けた日から十四日以内に、正式裁判の請求をすることができる。

覚えておくポイント

  • 略式命令は、罰金や科料の刑罰であり、これに同意して罰金を納付すると前科がつきます。
  • 略式命令は、公開の裁判なしで書面審理によって行われるため、自分の言い分を直接主張する機会はありません。
  • 検察官から略式命令を打診された際は、その内容をよく理解し、安易に同意しないことが重要です。
  • 略式命令に不服がある場合は、14日以内に正式裁判を請求する権利があります。迷う場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。