親権とは
親権とは、未成年の子どもを監護・養育し、その財産を管理する親の権利と義務の総称です。民法によって定められており、子どもの健全な成長と幸福を最優先に考えることがその本質とされています。
具体的には、大きく分けて「身上監護権」と「財産管理権」の二つが含まれます。
身上監護権は、子どもの身の回りの世話や教育、しつけを行う権利と義務です。子どもと一緒に住み、食事や着替え、健康管理など日常生活の面倒を見る「監護」や、学校選び、習い事、進路決定など子どもの教育に関する決定を行う「教育」が含まれます。また、子どもが非行に走らないよう指導したり、病気や事故から守ったりする義務もこれに含まれます。
一方、財産管理権は、子どもの財産を管理し、法律行為を代理する権利と義務です。例えば、子どもが祖父母から贈与されたお年玉や、子役として稼いだ収入などを管理したり、子どもの名義で契約を結んだりする際に、親が代理人として行動します。この際、親は子どもの利益のために財産を管理する義務を負い、親自身の利益のために使うことは許されません。
親権は、子どもが未成年である間、原則として父母が共同で行使します。しかし、父母が離婚する場合には、どちらか一方が単独で親権を持つことになります。
知っておくべき理由
親権が近年特に注目されている背景には、社会の変化や法改正の動きが大きく関係しています。
まず、離婚件数の高止まりが挙げられます。離婚が増える中で、子どもの親権をどちらの親が持つか、また親権を持たない親と子どもとの交流(面会交流)をどう保障するかといった問題が、多くの家庭で発生しています。特に、親権を失った親が子どもの養育に関わりたいと願うケースが増え、その権利がどこまで認められるべきかという議論が活発になっています。
次に、国際的な潮流や子どもの権利意識の高まりも影響しています。海外では、離婚後も父母双方が共同で親権を持つ「共同親権」が一般的である国が多く、日本でもこの制度導入の是非が長年議論されてきました。子どもにとって、離婚後も両方の親から愛情を受け、養育に関わってもらうことが望ましいという考え方が広がり、法制度の見直しを求める声が高まっています。
そして、2023年10月には、民法改正案が閣議決定され、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入が盛り込まれました。これにより、これまで原則として単独親権とされてきた日本の制度が大きく変わる可能性が出てきたため、社会的な関心が一層高まっています。共同親権が導入された場合、子どもの養育や教育方針、財産管理について、離婚後も父母が話し合い、協力していくことが求められるようになります。
どこで使われている?
親権という言葉やその概念は、私たちの日常生活の様々な場面で使われています。
最も身近なのは、子の出生時です。子どもが生まれた際、父母は共同で親権を持つことになります。出生届には親権者の記載欄はありませんが、法律上は自動的に共同親権の状態となります。
次に、離婚時です。夫婦が離婚する際には、未成年の子どもがいる場合、どちらか一方を親権者と定める必要があります。これは協議離婚(話し合いによる離婚)の場合でも、裁判離婚(裁判所を介した離婚)の場合でも同様です。親権者を決めなければ離婚は成立しません。親権者が決まると、その親が子どもの監護養育や財産管理の責任を負うことになります。
また、子どもの医療行為や契約行為においても親権が関係します。例えば、子どもが手術を受ける際や、携帯電話の契約、習い事の契約などを行う際には、親権者の同意や代理が必要となります。これは、未成年者は判断能力が十分でないとみなされるため、親権者が子どもの保護者として重要な決定を行うためです。
さらに、子どもの非行やトラブルが発生した際にも親権が問われます。子どもが他人に損害を与えた場合、親権者は監督義務者として、その責任を問われることがあります。これは、親が子どもの行動を監督する義務を負っているためです。
その他、親権停止・親権喪失の審判という形で、親権が使われることもあります。親が子どもを虐待したり、著しく監護を怠ったりして、子どもの利益を害する場合、家庭裁判所は親族などの申し立てにより、親権を停止したり、喪失させたりすることができます。これは、子どもの安全と福祉を最優先するための制度です。
覚えておくポイント
親権について理解しておくべき重要なポイントをいくつかご紹介します。
親権は「子どものための権利と義務」であること
親権は、親が子どもを支配するためのものではなく、子どもの健全な成長と幸福を保障するために、親に与えられた権利であり、同時に重い義務でもあります。親は常に子どもの利益を最優先に考えて行動することが求められます。離婚時には親権者を定める必要があること
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、必ず親権者を父母のどちらか一方に定める必要があります。これは、法律上の離婚要件であり、親権者が決まらないと離婚届は受理されません。協議で決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決定されることになります。親権と監護権は分離できる場合があること
一般的に、親権者となった親が子どもと一緒に住み、世話をします。しかし、特別な事情がある場合、親権者とは別に、実際に子どもを養育する「監護者」を定めることができます。例えば、親権は父親が持ち、監護は母親が行うといったケースです。これは、子どもの生活環境を大きく変えない方が良いと判断される場合などに検討されます。共同親権導入の動きがあること
現在、日本では離婚後は単独親権が原則ですが、民法改正案では、父母が協議により共同親権を選択できる制度の導入が検討されています。これにより、離婚後も両親が協力して子どもの養育に関わることが可能になるかもしれません。今後の法改正の動向に注目し、ご自身の状況にどう影響するかを把握しておくことが大切です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。