「発起人」という言葉を耳にされたことはありますでしょうか。普段の生活ではあまり馴染みがないかもしれませんが、会社を設立する際には非常に重要な役割を担う人たちのことです。

会社を立ち上げるという大きな決断には、多くの準備と責任が伴います。発起人は、その最初の段階で、会社の骨格を作り、未来を形作るための重要な役割を果たす人たちと言えるでしょう。

発起人とは

発起人とは、文字通り「会社を設立することを企画し、その設立手続きを実行する人」を指します。会社法という法律で定められた、株式会社を設立する際に必ず必要となる存在です。

発起人は、会社の設立に際して、定款(ていかん)と呼ばれる会社の基本的なルールブックを作成したり、設立に必要な株式を引き受けたりするなどの重要な役割を担います。会社設立時の株式を最低1株以上引き受けることが、発起人となるための条件とされています。

発起人になることができるのは、自然人(私たちのような個人)だけでなく、法人(会社など)も可能です。ただし、未成年者や成年被後見人とは? 大切な人を守る制度">後見人といった、法律行為に制限がある人は、単独で発起人となることはできません。

発起人は、会社の設立手続きが完了し、会社が法的に成立するまでの間、会社の設立に関する責任を負います。具体的には、設立中の会社の財産を管理したり、設立費用を負担したりすることもあります。会社が設立できなかった場合には、その責任を負うこともあります。

知っておくべき理由

近年、働き方の多様化や、自身のアイデアを形にしたいという起業志向の高まりから、会社設立への関心が高まっています。特に、インターネットを活用したビジネスや、少人数でのスタートアップが増える中で、会社設立はより身近な選択肢となりつつあります。

このような背景から、会社設立の第一歩である「発起人」という存在にも注目が集まっています。
また、クラウドファンディングなどを活用して、多くの人が少額ずつ出資して事業を立ち上げるケースも増えており、その際に「発起人」がどのような役割を果たすのか、という点に関心が寄せられることもあります。

さらに、会社のガバナンス(企業統治)や、設立時の責任の所在が重視される傾向にあるため、発起人の役割や責任についても、以前にも増して意識されるようになっています。

どこで使われている?

発起人という言葉が最も直接的に使われるのは、やはり「株式会社の設立時」です。

具体的な場面としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 新しい事業を始めるために会社を設立する時
    友人やビジネスパートナーと一緒に会社を立ち上げる際、事業計画を練り、資金調達を行い、法務局に設立登記を行うまでの一連のプロセスにおいて、発起人が中心的な役割を担います。
  • 個人事業主が法人成りする時
    これまで個人で事業を行っていた方が、事業規模の拡大や信用力の向上などを目的に、株式会社を設立する際にも、その個人事業主自身が発起人となることが一般的です。
  • M&A(企業の合併・買収)などで新会社を設立する時
    複数の企業が共同で新しい事業を行うために新会社を設立する場合や、特定の事業部門を切り離して新会社として独立させる場合などにも、その新会社の設立に際して発起人が必要となります。

発起人は、単に書類上の名前を連ねるだけでなく、会社の設立に関する意思決定を行い、その実行に責任を持つ、非常に重要な役割を担う存在なのです。

覚えておくポイント

会社設立を検討されている方、あるいは発起人という言葉に興味を持たれた方が覚えておくと良いポイントをいくつかご紹介します。

  1. 発起人は会社の「生みの親」である
    発起人は、会社の設立を企画し、定款を作成し、株式を引き受けることで、会社の基本的な枠組みを決定します。会社の理念や事業内容、資本構成など、会社の根幹に関わる部分を最初に決定する重要な役割を担うため、まさに会社の「生みの親」と言える存在です。
  2. 設立時の責任が伴う
    発起人は、会社が設立されるまでの間、設立に関する様々な責任を負います。例えば、設立費用を負担したり、設立中の会社の財産を管理したりする義務があります。もし会社が設立できなかった場合や、設立手続きに問題があった場合には、その責任を問われる可能性もあります。安易に発起人となることは避け、その責任を十分に理解しておくことが大切です。
  3. 発起人の人数に制限はないが、複数いる場合は役割分担が重要
    会社法上、発起人は1人でも会社を設立できます。しかし、複数の発起人がいる場合は、それぞれがどのような役割を担い、どのような責任を負うのかを明確にしておくことが重要です。後々のトラブルを避けるためにも、事前に話し合い、合意内容を書面にしておくことをお勧めします。
  4. 設立後の経営者(役員)と発起人は必ずしも同じではない
    発起人は会社の設立に携わりますが、設立後に会社の役員(取締役など)に就任するかどうかは自由です。発起人として設立に貢献し、その後は会社の経営には関わらないという選択も可能です。もちろん、発起人がそのまま会社の経営者となるケースが一般的ですが、この点は区別して理解しておきましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。