自賠責基準とは

自賠責基準」とは、交通事故の被害者が受けた損害に対する賠償額を算定する際の、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)が定める支払い基準のことです。自賠責保険は、自動車を運転するすべての人に加入が義務付けられている強制保険であり、交通事故の被害者を救済することを目的としています。

自賠責基準は、被害者の治療費、休業損害、精神的苦痛に対する慰謝料など、さまざまな損害項目について、支払われる金額の上限や計算方法を定めています。これは、被害者が最低限の補償を受けられるようにするための基準であり、一般的に、後述する任意保険基準や弁護士基準と比較すると、最も低い水準の賠償額となることが多いです。

例えば、慰謝料についても、自賠責基準では入通院日数に応じて上限が設けられており、重い後遺障害が残った場合でも、その上限額は他の基準に比べて低く設定されています。

知っておくべき理由

自賠責基準を知らないと、交通事故の被害に遭った際に、本来受け取るべき正当な賠償額よりも低い金額で示談してしまう可能性があります。

例えば、あなたが交通事故で怪我を負い、加害者側の保険会社から示談金の提示を受けたとします。提示された金額が妥当なものなのかどうか、判断に迷うこともあるでしょう。もし、その提示額が自賠責基準に基づいて計算されたものであった場合、あなたは十分な賠償を受けられないかもしれません。

実際に、保険会社が提示する示談金は、自賠責基準をベースにしていることが少なくありません。特に、被害者自身が交渉を行う場合、保険会社は自賠責基準に近い金額を提示してくる傾向があります。

「治療費は支払われたけれど、休業した分の収入や精神的な苦痛に対する慰謝料が思ったより少なかった」と感じるケースも、自賠責基準で計算された賠償額を受け入れてしまった結果であることがあります。本来であれば、より高い基準で賠償額を算定できる可能性があったにもかかわらず、その事実を知らなかったために、不利益を被ってしまうという事態になりかねません。

具体的な場面と事例

具体的な場面として、交通事故で骨折し、2ヶ月間入院・通院を余儀なくされ、その間仕事を休んだケースを考えてみましょう。

加害者側の保険会社から示談金の提示がありました。提示された内訳は以下の通りです。

  • 治療費:実費全額
  • 休業損害:1日あたり5,700円 × 60日 = 342,000円
  • 入通院慰謝料:1日あたり4,300円 × 60日 = 258,000円
  • 合計:約60万円

この金額は、自賠責基準に基づいて計算されたものです。自賠責基準では、休業損害は原則として1日あたり5,700円(上限19,000円)、入通院慰謝料は1日あたり4,300円と定められています。

しかし、もしあなたが会社員で、実際の収入が1日あたり1万円だった場合、休業損害は本来であれば1万円 × 60日 = 60万円となるはずです。また、入通院慰謝料も、弁護士基準で計算すると、このケースでは数十万円から100万円以上になることも珍しくありません。

この示談提示を、自賠責基準であることを知らずに受け入れてしまうと、あなたは本来受け取るべき賠償額よりも、数十万円から場合によっては数百万円も少ない金額で示談してしまうことになります。

特に、後遺障害が残るような重大な事故の場合、自賠責基準と弁護士基準の差はさらに大きくなる傾向があります。

覚えておくポイント

  • 自賠責基準は、交通事故の被害者が受けられる最低限の補償基準であり、一般的に最も低い賠償額となります。
  • 保険会社からの示談提示額は、自賠責基準をベースにしていることが多いため、安易に受け入れないように注意が必要です。
  • 自身の損害が自賠責基準で算定されていると感じたら、他の算定基準(任意保険基準、弁護士基準)の存在を認識し、比較検討することが重要です。
  • 適切な賠償額を得るためには、交通事故に詳しい弁護士に相談し、弁護士基準での交渉を依頼することを検討しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。