利益相反取引とは

利益相反取引とは、会社の役員(取締役など)が、自身の利益のために会社と取引を行うことで、会社に不利益が生じる可能性のある取引を指します。役員は会社の経営を任されている立場であり、会社のために職務を遂行する義務があります。しかし、役員自身が取引の相手方となる場合、役員個人の利益と会社の利益が対立する状況が生まれてしまいます。

会社法では、このような利益相反取引について、会社の利益を保護するために特別な手続きを定めています。具体的には、取引の種類に応じて、取締役会の承認株主総会の承認を得る必要があるとされています。この手続きを経ずに利益相反取引が行われた場合、取引が無効になったり、役員が会社に対して損害賠償責任を負ったりする可能性があります。

知っておくべき理由

「利益相反取引」という言葉を知らないと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。例えば、あなたが会社の経営者であるとします。会社の資金を使って、あなたが個人的に所有する不動産を会社に売却するケースを考えてみましょう。あなたは「会社にとって良い物件だから」と考えていても、もしその売却価格が市場価格よりも高額であれば、会社は不当な損失を被ることになります。

このような場合、他の株主や監査役から「役員が自分の利益のために会社に損害を与えた」と指摘され、損害賠償請求をされる可能性があります。また、取引自体が無効と判断され、会社が支払った代金を返還しなければならなくなるかもしれません。

あるいは、あなたが友人と共同で会社を設立し、その友人が役員を務めているとします。友人が経営する別の会社から、相場よりも高額な資材をあなたの会社が購入していたとしたらどうでしょうか。あなたは会社の利益が損なわれていることに気づかず、会社の業績が悪化する原因が、役員である友人の利益相反取引にあったという事態に直面するかもしれません。

このように、利益相反取引のルールを知らないと、会社に大きな損害を与えたり、逆に自分が不利益を被ったりする可能性があるため、注意が必要です。

具体的な場面と事例

利益相反取引には、主に以下の3つの類型があります。

1. 直接取引(会社法第356条第1項第1号)

役員が、直接会社の相手方となって行う取引です。

  • 事例:
    • 会社の取締役が、自身が所有する土地を会社に売却する。
    • 会社の取締役が、会社から個人的に金銭を借り入れる
    • 会社の取締役が、会社に対して自身の事業で製造した商品を販売する

2. 間接取引(会社法第356条第1項第2号)

会社と役員以外の第三者との取引ですが、役員がその第三者の代理人や代表者として関与し、実質的に役員自身の利益につながる取引です。

  • 事例:
    • 会社の取締役が、自身が代表取締役を務める別の会社と、自社との間で業務委託契約を結ぶ。
    • 会社の取締役が、妻が経営する会社の代理人として、自社との間で物品売買契約を締結する。

3. 会社と役員との間の利益が相反する取引(会社法第356条第1項第3号)

会社と役員以外の第三者との取引ですが、役員がその取引によって会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図る取引です。

  • 事例:
    • 会社の取締役が、会社が借り入れを検討している銀行に対し、自身の個人的な債務保証人となるよう会社に依頼する。
    • 会社の取締役が、自社が購入を検討している不動産を、個人的に先に購入してしまう

これらの取引は、会社の利益を保護するため、取締役会(または株主総会)の承認を得る必要があります。

覚えておくポイント

  • 会社の役員が、自身の利益のために会社と取引を行う可能性のある状況を「利益相反取引」と呼びます。
  • 利益相反取引には、会社法で定められた承認手続き(取締役会や株主総会の承認)が必要です。
  • 承認手続きを怠ると、取引が無効になったり、役員が会社に対して損害賠償責任を負ったりするリスクがあります。
  • 役員自身の直接的な取引だけでなく、役員が関与する第三者との取引も利益相反取引に該当する場合があります。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。