取消権とは? 不利な契約をなかったことにする権利
取消権とは
取消権とは、一度成立した契約や法律行為について、特定の事情がある場合に、その効力を遡って無効にすることができる権利を指します。つまり、契約が最初から存在しなかったかのような状態に戻せる権利です。
例えば、民法では、以下のような場合に取消権が認められています。
- 詐欺:相手方に騙されて契約をしてしまった場合(民法第96条)
- 強迫:相手方から脅されて契約をしてしまった場合(民法第96条)
- 錯誤:契約の重要な部分について勘違いをして契約をしてしまった場合(民法第95条)
- 制限行為能力者の行為:未成年者や成年被後見人とは? 大切な人を守る制度">後見人などが、保護者の同意なしに行った契約(民法第120条、第121条の2など)
取消権を行使すると、その契約は初めから無効であったとみなされます。既に支払ってしまったお金があれば返還を請求できますし、引き渡してしまった物があれば返還を求めることができます。
知っておくべき理由
取消権について知らないと、不本意な契約に縛られ、大きな損害を被る可能性があります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
高額な商品を購入してしまったケース
一人暮らしの高齢者が、訪問販売員から「この浄水器を付ければ健康になる」と強く勧められ、不要な高額な浄水器を契約してしまったとします。後日、冷静になって不要だと気づいても、「契約は契約だから」と諦めてしまうかもしれません。しかし、もし販売員が虚偽の説明をしていたり、強引な勧誘をしていたりした場合は、詐欺や強迫を理由に取消権を行使できる可能性があります。これを知らないと、不要な商品を使い続けるか、高額な代金を払い続けることになります。投資詐欺に遭ってしまったケース
「必ず儲かる」という話に乗せられ、多額の投資をしてしまったとします。しかし、実際には元本が保証されておらず、ほとんど回収できないような詐欺的な投資話だった場合、取消権を知らなければ、泣き寝入りするしかありません。詐欺による契約は取り消せる可能性があるため、知っていれば被害を回復できるかもしれません。未成年者が親に内緒で契約してしまったケース
高校生の子どもが、親に相談せずに高額なオンラインゲームの課金契約をしてしまったとします。親が後からその事実を知り、困惑するかもしれません。この場合、子どもが未成年者であるため、親がその契約を取り消せる可能性があります。この制度を知らないと、子どもが作った借金を親が負担することになってしまいます。
このように、取消権は、消費者が不当な契約から身を守るための重要な手段となるのです。
具体的な場面と事例
取消権が問題となる具体的な場面をいくつかご紹介します。
訪問販売での契約
自宅に突然訪れた業者から、必要のないリフォーム工事や高額な布団の購入を強く勧められ、断りきれずに契約してしまった場合です。業者の説明が事実と異なっていたり、威圧的な態度で契約を迫られたりした場合は、詐欺や強迫を理由に契約を取り消せる可能性があります。また、特定商取引法に基づくクーリング・オフ制度も利用できる場合がありますが、取消権とは別の制度です。インターネットでの誤った購入
オンラインショッピングで商品を注文する際、数量や種類を誤って選択してしまい、意図しない契約が成立してしまった場合です。例えば、1個だけ買うつもりが誤って10個注文してしまった、といったケースです。これが契約の重要な部分の錯誤と認められれば、契約を取り消せる可能性があります。ただし、自分の不注意による勘違いでは、多くの場合、取り消しが認められないこともあります。認知症の親族による契約
認知症を患っている親族が、判断能力が不十分な状態で、高額な不要品を購入する契約をしてしまった場合です。この場合、親族が成年被後見人であれば、その契約は取り消すことができます。成年後見制度を利用していない場合でも、判断能力が著しく低下していたことが証明できれば、取消しが認められる可能性があります。
- 取消権は、一度成立した契約を遡って無効にする権利です。
- 詐欺、強迫、錯誤、制限行為能力者の行為などが取消しの主な理由となります。
- 不当な契約から身を守るための重要な手段であり、知っておくことで損害を回避できる可能性があります。
- 取消権を行使できる期間には制限があるため、心当たりのある場合は早めに専門家に相談することが重要です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。