承諾とは

承諾とは、ある人が別の人の申し出(申込)に対して、その内容を受け入れる意思表示をすることを指します。民法では、契約は「申込み」と「承諾」という二つの意思表示が合致することによって成立すると定められています。

例えば、あなたがお店で商品を「買います」と申し出て、お店が「売ります」と応じることで売買契約が成立します。このお店側の「売ります」という意思表示が承諾にあたります。

承諾は、口頭でも書面でも、あるいは行動によっても成立し得ます。ただし、承諾の意思表示は、申込みの内容と完全に一致している必要があります。もし、申込みの内容に条件を付けたり、変更を加えたりして返答した場合、それは新たな申込み(変更を加えた承諾)とみなされ、元の申込みに対する承諾とはなりません。

民法第522条(契約の成立) 1. 契約は、契約の内容について当事者の合意があったときに成立する。 2. 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を要しない。

知っておくべき理由

承諾の概念を理解していないと、日常生活やビジネスの場面で思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

例えば、あなたが友人から「今度の日曜日に引っ越しを手伝ってくれたら、お礼に1万円払うよ」という申込みを受けたとします。あなたが「いいよ、手伝うよ」と返事をした時点で、引っ越しを手伝うことと1万円を受け取ることについての契約が成立します。もし、後になって友人が「やっぱり5千円しか払わない」と言い出したり、あなたが「やっぱり手伝わない」と言い出したりすれば、契約違反となり、トラブルに発展する可能性があります。

また、インターネットでの買い物でも同様です。商品をカートに入れ、購入ボタンを押す行為は、多くの場合、申込みとみなされます。そして、サイト側から「ご注文ありがとうございます」といったメールが届いた時点で、承諾がなされ、売買契約が成立していることが一般的です。もし、この承諾のタイミングを理解していないと、「まだ契約は成立していない」と思い込み、キャンセルができない状況に陥ることもあります。

さらに、不動産の賃貸契約や業務委託契約など、重要な契約においては、口頭での承諾であっても法的な効力を持つため、後で「言った」「言わない」の水掛け論になり、大きな紛争に発展するリスクがあります。特に、重要な契約では、承諾の意思表示が明確に行われたかどうかが争点となることが少なくありません。

具体的な場面と事例

承諾が問題となる具体的な場面は多岐にわたります。

事例1:業務委託契約のトラブル
フリーランスのデザイナーAさんが、クライアントB社から「ウェブサイトのデザインを10万円で依頼したい」というメールを受け取りました。Aさんは「承知いたしました。進めさせていただきます」と返信し、作業を開始しました。しかし、B社は後日「10万円は高すぎる。5万円でやってもらえないか」と提案してきました。この場合、Aさんの「承知いたしました」という返信は、B社の申込みに対する明確な承諾とみなされるため、10万円での契約が成立しています。B社が後から金額を変更しようとしても、Aさんが同意しない限り、当初の10万円での契約が有効です。

事例2:口頭での契約と紛争
Cさんが知人Dさんに「この車、100万円で買ってくれないか」と持ちかけました。Dさんはその場で「いいよ、買うよ」と口頭で承諾しました。しかし、後日Dさんが「やはり買わない」と言い出しました。CさんはDさんの承諾があったことを理由に、車の購入を求めました。口頭での承諾であっても契約は成立しているため、CさんはDさんに対して契約履行を求めることができます。ただし、口頭契約は証拠が残りにくいため、紛争になった際に立証が難しいという問題があります。

事例3:条件付きの承諾
EさんがFさんに「来週末、一緒にゴルフに行かないか」と誘いました。Fさんは「いいよ、でも晴れたらね」と返事をしました。この場合、Fさんの返事は「晴れたら」という条件が付いているため、Eさんの申込みに対する純粋な承諾とはなりません。これは新たな申込み、あるいは条件付きの承諾と解釈され、Eさんがその条件を受け入れて初めて契約(ゴルフに行く約束)が成立します。もし、Eさんが「晴れなくても行く」と返答すれば、Fさんの条件とは合致せず、契約は成立しません。

覚えておくポイント

  • 契約は「申込み」と「承諾」の意思表示が合致することで成立します。
  • 承諾は、申込みの内容と完全に一致している必要があります。条件を付けたり、内容を変更したりすると、新たな申込みとみなされます。
  • 口頭での承諾でも契約は成立しますが、後日のトラブルを避けるため、重要な契約では書面での確認が望ましいです。
  • 承諾のタイミングを理解することは、契約トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別のトラブルについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。